初学者によるクラウドエンジニア入門① ~クラウドとは~

     私、社内のIT担当者という肩書でお仕事しております。ITの世界に少しながら足を突っ込んでいる者として、自分のため及び、同じような環境でお仕事をされている方々向けに、少しでも何か記事を残せないかと考えました。
     IT担当者といいつつ、そこまでバリバリのエンジニアとして技術を携えているわけではございませんが、逆に、私のようなスキルレベルの温度感に共感できる方もいらっしゃるのではなかろうか?と思い、私が勉強したことを記事に起こしてシリーズ化していきたいと思っております。

     対象としている読者は下記のような方々を想定しております。

    • IT(およびAWS)の世界に少し興味を持っていて、勉強を始めようと思っている方。
    • 社内でIT業務を担当していて、稟議や予算を取得するために、上司や関係部署のIT業務を普段担当していない方々に対して説明する必要のある方。
    • 初学者、初心者用のためのIT関係のコンテンツを探している方、情報収集をしている方。
    • IT企業や開発企業ではなく、どちらかとユーザー企業でITに携わっており、ITを本業としているわけではない環境で勤務されている方。

     基本的には、AWSを使用することを前提に進めたいと考えており、参考にさせていただいたのは、くろかわこうへいさんご記載のこちらのQita記事(https://qiita.com/KurokawaKouhei/items/4e9aa3b526f3f233bf85)で公開されている、「クラウドエンジニア(AWS)ロードマップ2021」に沿って勉強しながら、記事をアップロードしていきたいと考えております。

     ただ、私のこれまでの経験でいうと、ITには様々な関係者が出てきますので、その方々との関りについても記載できればと考えております。

     この記事を記載するにあたり、「AWS Cloud Tech(くろかわさん主催)」https://aws-cloud-tech.com/で勉強させていただいたり、Youtube動画(クラウドエンジニアになるための学習ロードマップ2021【AWSエンジニア】 – YouTubeも拝見したり、いつも勉強させていただいております。ありがとうございます。

    目次

    クラウドとは

    クラウドとは

     そんなわけで、まずは「クラウドとは何か」というところをまずは勉強したいと思います。クラウドという言葉を一言でいうと、「自分(自社)でハードウェアやソフトウェアを購入して整備した環境ではなく、外部の事業者(クラウド事業者)が整備したハードウェア・ソフトウェア環境」となり、特定の技術を指しているわけではなく、一つの「概念・分野」を表す言葉ととらえていただければよいのかなと思います。

     一つ「車」を例に挙げてみます。車と言っても、よくよく考えてみると表現にはいろいろな切り口があります。例えば、トヨタ、ホンダ、日産、スバルなどの「メーカー」があります。また、自分で購入する場合と、レンタカーやリースなど、利用する時の「提供方法」の違いがあります。さらには、自分で運転するのか、ドライバーを手配して運転してもらうのか、タクシーのように行き先を伝えるのかというような「利用方法」の違いもあります。今回のトピックである「クラウド」という言葉は、ITの分野での「提供方法」や「利用方法」の概念に相当するのではないかと考えています。今回は、「メーカー」としてAWSをメインに取り上げますが、それいがいにもGoogleやMicrosoftなど、いろいろな会社がクラウドを提供しています。

     また、「クラウド」という言葉は、自社で購入したハードウェア、ソフトウェア環境である「オンプレミス(オンプレ)」に対応する言葉として使われます。上記の車の例でいうと、オンプレミスは自分で購入するスタイルに近いのに対して、クラウドは、レンタカーやリース、の形態に近いのではないかと思います(契約など細かな部分で筆者が把握していない違いをぼんやりさせるために「近い」と表現しました。)。「クラウドに移行する」という言葉を使うことがありますが、それは、これまで自社の環境(オンプレミス)で何らかのシステムを稼働していた場合、そこで動いていたサーバやアプリケーションを、外部の事業者(クラウド事業者)が整備した環境に構築し、そこでサービスを動かすという事になります。車の例に当てはめると、これまで自社で購入した車を自分で運転して目的地に向かっていたのをやめて、今後、移動はタクシーにしてしまおう、という感じでしょうか。

    コンピュータがなくなったわけではない

     クラウド環境を使用するにあたり、1点注意したい事としては、「コンピュータがなくなる(不要になる)わけではない」という事です。当たり前といえば当たり前ですが、私自身、IT部門以外の社内ユーザーからしばしば質問されることがありますので、普段パソコンになじみのない方々にとっては意外とイメージしにくい部分であったりするのかなと思います。

     オンプレミスでシステムを構築する際、サーバ(アプリケーションサーバやデータベースサーバなどのいわゆる物理的なハードウェア)、アプリケーション(サーバにインストールして使用するアプリケーションやデータベースソフトなど)、および必要に応じてネットワーク機器が必要になります。一方、クラウド(後述しますが、SaaS、PaaS、IaaSのうち、SaaSを想定した場合)でシステムを導入する際、オンプレミスで必要だったサーバやアプリケーションを自社で購入する必要はほとんどなくなります。

     クラウドで実際にシステムを構築して運用を開始すると、ハードウェアやソフトウェアの部分をほとんど気にすることがなくなり、Webアプリケーションであればブラウザのみで運用することができるようになるため、コンピュータが不要になったように感じることがありますが、実際には、クラウド事業者が整備したハードウェア、ソフトウェアが稼働しているという事を覚えておきましょう。

    関係部署とのかかわり

     社内で予算を取ったり稟議を上げる時など、例えば経理部門へ費用についての説明が必要になる場合があります。上述した通り、オンプレミスとクラウドではシステムの構成が変わりますので、経理部門で気にするところの勘定科目が異なってくることが考えられます。

     オンプレミスでは、サーバやデータベースソフトなどのアプリケーションを購入する必要があります。スペックにもよりますが、数10万円から数百万円、場合によっては積算すると、数千万円のハードウェア・ソフトウェアを購入する必要があります。会社ごとに扱いは異なると思いますが、それらの購入金額は資産の扱いとなりBS科目での計上となる事が考えられます。

     一方、クラウドではそのような初期費用は発生せず、システムを使用するための使用料(ライセンス料と言ったり、サービス利用料と言ったり、表現はそのシステムごとに異なります。)を支払うことが多いように思います。これらは、月額または年額で発生することが多く、費用としてPL科目での計上になる事が多いのではないかと思います。

     ただし、注意点としては、クラウドであっても、何らかの設定作業は発生する可能性があるという事です。次回以降の記事でも記載していこうと思いますが、上述の通り、コンピュータそのものがなくなったわけではありません。そのため、クラウドの利用の仕方によっては、OSのセットアップ、ウィルスソフトのインストール、ユーザー情報の登録など、何らかの初期設定作業は必要になる場合があります。その作業をサポートベンダーにお願いする場合は、SE作業費が発生する可能性があります。オンプレミスと異なり、ハードウェアの購入はなくなったとしても、コンピュータを使うための設定作業がなくなったわけではありませんので、心にとめておいてください。

    クラウドの定義とメリット

    クラウドの定義

     それでは、クラウドとは何か、メリットは何かというところを、筆者の経験を踏まえてもう少し具体的にご説明したいと思います。その前に、まずはIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が提供している資料から、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)の定義を引用してみます。

    クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ス
    トレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスするこ
    とを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当
    てられ提供されるものである。このクラウドモデルは 5 つの基本的な特徴と 3 つのサービスモデル、および
    4 つの実装モデルによって構成される。(https://www.ipa.go.jp/files/000025367.pdfから引用)

     ここに記載されている通り、「5つの基本的な特徴」をクラウド全般に当てはまる基本として、「3つのサービスモデル」と「4つの実装モデル」を組み合わせて、クラウドを使いこなしていくことになります。

    5つの基本的な特徴

     上の図にあるように、クラウドには5つの基本的な特徴があります。要約すると、「ネットワーク上にある、複数のユーザーで共有されたリソースに対して、様々なデバイスからアクセスすることができる。ユーザーは、必要な時に必要な分だけ拡張することができ、直接提供事業者とやり取りをする必要はない。アクセスした場合には、利用した分だけ課金される。」という感じでしょうか。

    3つのサービスモデルと4つの実装モデル

     次回の記事で、3つのサービスモデルであるSaaS、PaaS、IaaSについて勉強してみようと思います。また、4つある実装モデルに対して、本記事ではパブリッククラウドのAWSをメインに記載していこうと思います。筆者の能力の可能な範囲でほかの情報も含めていきたいと思いますが、実力に見合った形で書いていこうと思います(言い訳)。

    クラウドのメリット・デメリット

     以上、クラウドの基本的な部分を記載してきましたが、本記事の最後に、クラウドのメリット・デメリットを記載したいと思います。

    項目オンプレミスクラウド
    構築・経済性・必要なスペックを多めに見積もる必要があり、初期構築の際にハードウェアなど、初期費用が増大する可能性がある。

    ・ハードウェアのライフサイクル(EOL)に合わせて、更新スケジュールを考慮する必要がある。

    ・ハードウェアのライフサイクルや運用をしっかり管理できれば、トータルコストではクラウドより安価に抑えられる可能性がある。

    ・OSのライフサイクルも気にする必要があり、ハードウェアの保守期限が残っていたとしても、OSのサポート期限を迎えた場合など、不必要な更新を迫られる場合がある。
    ・ストレージ容量など、必要な時に増加することができる。

    ・SaaSなど、OSのライフサイクルを考慮しなくてもよい場合がある。(OSなどを管理したくない場合にSaaSを選択するなど、自社のスキルに合わせてサービスモデルを選択することができる。)

    ・従量課金制なので、深夜や休日など、使用しない時間帯はシャットダウンすることで、コストを削減することができる。

    ・構築の方法によっては、トータルコストはオンプレミスより上昇する場合がある。
    拡張性・柔軟性・スポット的に大量のアクセスが考えられるWebアプリケーションなどを事前に考慮しておく必要がある。

    ・拡張する場合など、ハードウェア、ソフトウェアの高度なスキルが必要になる場合がある。
    ・ある程度のスキルは必要だが、スポット的なスペックの増強など、柔軟に対応することができる。
    可用性・BCP・冗長構成やバックアップなど、自社で構築する必要がある。

    ・社内で構築している場合、停電などでUPS経由でサーバーダウンした場合など、サーバーがある拠点での再起動など現地での対応が必要になる。
    ・冗長構成やバックアップなどもサービスとして提供されている場合が多く、ある程度のスキルがあれば冗長構成やバックアップ環境を構築することができる。

    ・ネットワーク経由でサーバの再起動ができる。

    ・社内に物理的なハードウェアが無いので、災害時などでも別の拠点から作業するなど、事業を継続することができる。
    管理・運用・ハードウェア、OS、ミドルウェアなど、管理運用ですべての内容を考慮する必要がある。・サービスモデルを選択することで、責任範囲を分けることができる。

    最後に

     以上、本記事では、「クラウドとは」という内容で記載いたしました。次回は、SaaS、PaaS、IaaSなどもう少し細かな部分について、AWSの責任共有モデルと絡めて記載していきたいと思います。

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